2017/05/10

ホテル メトロポリタン エドモント

ホテル メトロポリタン エドモント
ホテル メトロポリタン エドモント

1985年の開業時、このホテルの周りにはただ、空き地が広がっていた。そんな場所で始まったホテルが、料理で人を呼ぶ。料理人もこぞって訪れ、すばらしい客層に恵まれる。まぎれもなくその源は、中村勝宏統括名誉総料理長にあった。彼を慕い、ついていったシェフたちがいま日本の料理界に欠かせない存在となって、各地で次の世代を導いている。
さまざまな仕事で日本各地も、海外にも同行した石田日出男総料理長が中村統括名誉総料理長と一緒に歩いた日々を、エドモントの料理を語る。そこには、互いに認め合った2人のシェフの物語がある。

石田 日出男
石田 日出男

石田 日出男
高校卒業後、赤坂の洋食レストランを経て1970年東京ヒルトンホテル入社。沖縄ヒルトンに異動した後、先輩に誘われて洋菓子店 エトワールを始める。1978年にはスペインへ渡りホテル ソート グランデに勤務。1980年帰国、新橋第一ホテルを経て、1985年ホテル エドモント(現ホテル メトロポリタン エドモント)入社。2008年にはパティシエとして北海道洞爺湖サミットに参加、米国ブッシュ大統領(当時)の誕生日を祝うケーキも手掛けた。

全てを変えた存在

「当ホテルの料理と言えば、中村勝宏統括名誉総料理長につきます」。石田日出男総料理長は力強く断言する。中村統括名誉総料理長は1970年に渡欧、チューリッヒを経てアルザス、プロヴァンス、パリなど15年間に渡って名だたるレストランで活躍、日本人として初めてミシュラン1ツ星を獲得し、4年間その地位を守った、伝説のグランシェフである。

ホテルの開業以来、フランス料理レストラン フォーグレインを作り、多くの料理人を育て、レストランの料理を宴会料理へと展開していった。「33歳のとき、エドモントに入社して初めてお会いしました。私に対しても敬語を使ってくださるような、やさしい方だったのを覚えています。しかし、コックコートを着ると一変した。料理への厳しさ、盛り付けだけでなく出し方、お客さまが帰られるまでのふるまい方。全てが違っていて衝撃を受けました。19歳のときから料理の世界にいましたが、この出会いで全てが変わったと言えるほどです。それくらい、私のレベルを上げてくれた方です」。

そうして中村統括名誉総料理長から大きな影響を受け、フォーグレインから旅立ったシェフたちはいま、各地のグループホテルで総料理長となり、その料理を受け継いでいる。
「フランス料理を作る上で最後の仕上げとなるソース作りは主役となる素材に勝ってはならず、かといって以下でもなく、完全に一体とするという中村ムッシュの教えを守り、地域性も考慮しながらそれぞれの料理に邁進しています」。

大宴会場「悠久」
大宴会場「悠久」

石田総料理長はパティシエである。「ヒルトンホテルでシェフの空きがなく、サービスからパティシエへと任命されました。その当時はパティシエの地位が低く、料理人になってやる! と思っていましたね」。デザートが重視されない時代、最初は抵抗があった。しかし次第に、その世界にのめり込んでいく。「料理は肉や魚といった素材を一度解体して加工するもの。一方、デザートは形のないところから組み立てていくものです。牛乳、水、塩、粉、玉子、バター、砂糖など、素材の組み合わせによってシュークリームになったり、スポンジになったりします。水と砂糖で作るガムシロップは煮詰めていくと飴になり、色彩や造形を入れるとバラのような芸術的な形にもなる。そこに可能性を感じたのです」。

バー「カルーザル」
バー「カルーザル」
大宴会場「万里」
大宴会場「万里」

料理とデザートは一体のもの

パティシエの存在を、誰よりも認めてくれたのも中村統括名誉総料理長だった。「自分の料理を決めるのはあなた。コース最後のデザートはとても重要で、料理とデザートは一体のものだと言ってくれました。パティシエ冥利に尽きる言葉です。発想力も鍛えられました。例えば魚料理の段階で、デザートはこうして欲しいというリクエストがくる。お客さまを見て、中村ムッシュはメニューを変える。お客さまが望んでいるものを直感的に掴まれると思うのですが、一つのパターンにしばられず、常に考える、変え続けるという姿勢も学びました」。

身体の中にあるものが、皿盛りや調理のセンスに出てくるということも教えられた。「料理人は芸術家ではありませんが、文化、絵画、美術など、日頃からいいものに触れるべきだと思っています。分かる分からないではなく、そこから受け取った何かがいつか、どこかで活きてくるものだと中村ムッシュから学びました。時間が空いたら2人で美術館に行くこともありましたね。海外旅行であの絵を見たなんて話もできる、そんな存在でもあります」。

皿や器、カトラリーを見ながら、こう調理してみよう、こう盛ってみようという想像力を培う。工夫しようという意識をいつも持っていないと、いざという時に出すことはできない。

ホテルはアレルギーチェック機能、コンプライアンス体制を整え、全面的なリノベーションを進めるなど中長期的な視点に立って、ハードもソフトも充実したより上質なホテルを目指す。食のエドモントを貫きながら。

ロビー
ロビー

「私たちが大切にしているのは、基本となるクラシックな料理です。それがあってこそ、新しい感覚のものを取り込んでいける。そしてフランス料理はナイフ、フォーク、スプーンで食する世界です。飾ることだけに注視せず、お客さまが笑顔で会話をしながら召し上がることを考えてデコレーションして欲しい」。

ダイニング・カフェ「ベルテンポ」
ダイニング・カフェ「ベルテンポ」
日本料理「平川」
日本料理「平川」

[ホテル メトロポリタン エドモント]
東京都千代田区飯田橋3-10-8
TEL:03-3237-1111
URL:https://edmont.metropolitan.jp/

鉄板焼「山彦」
鉄板焼「山彦」

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