2010/1/14

Vol.4 
株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック

高性能カロリー測定装置「カロリーアンサー」 

カロリーアンサー
カロリーアンサー

 ジョイ・ワールド・パシフィックの高性能カロリー測定装置「カロリーアンサー」をご存知だろうか。リンゴの糖度計を基礎として青森県で研究、開発が進められた製品で、元々はスーパーで広く活用されていた。しかし近年外食産業でもその価値が求められ始めている。

1つのメニューにつき、約3分間でカロリー計測が完了

 電子レンジとパソコンが一体化したような、高性能カロリー測定装置「カロリーアンサー」の設計、製造、販売を一貫して行うジョイ・ワールド・パシフィック。本社工場は青森にあり、東京に営業所を構える。同社が糖度計からヒントを得てカロリー計測機の開発に着手したのは1998年。一般的に食品の栄養表示をする場合、個別表示では「タンパク質、カロリー、脂質、炭水化物、ナトリウム」の5項目表示が必要だが、この5項目が計測できる「カロリーアンサー」が製品化したのは、2006年6月。現在、スーパーマーケットで弁当や総菜の表示に活用されたり、宅配弁当店、チェーン居酒屋などに導入され、これまでに約100台が販売されている。
 通常、カロリー計算は、管理栄養士が五訂成分表に照らし合わせて手計算、もしくはコンピューターソフトで行う。ただし、材料を組み合わせた計算はできても、煮たり、焼いたりといった調理や調味料が加わると、正確な数値を出すことは難しくなる。例えばフランス料理の場合は、付け合わせやソースなど様々なパーツがあり、計算はさらに複雑化する。正確な数値を出すために理化学分析センターに依頼すると1週間〜10日間かかる。
 カロリーアンサーの特徴は計測のスピードにある。フードプロセッサーを使って料理を粉砕したものに、蛍光灯や太陽光から出ている近赤外線を当てて測定する。料理そのものを計測すると、光が微弱なため表面の値しか計測できないからだ。約3分間で測定は完了し、タンパク質、カロリー、脂質、炭水化物の値がコンピューター画面に表示される。重量センサーで重さを計るので、100g単位でも総量でも計測は可能だ。ナトリウム計測は、サンプルから10g採取して90gの精製水に混ぜ、茶こしでこしたものに、塩分濃度測定器を差し込んで計測する。2人1組になって、測定する間に洗い物をして段取りを良くすれば、1時間に5品は測定できる計算だ。

季節ごとの利用にレンタルプランも開始

 ホテルの導入事例としては、北海道の夕張リゾートホテルでは導入から2年が経過し、東京のアルカディア市ヶ谷でも1年前に導入している。購入の場合の価格は340万6910円(1年分の保守契約料含む、税別)。リース契約の場合は、月々約6万5000円(税別)。レンタルプランは1日4万8966円(指導費用1日2万4000円込み)〜1年単位まで用意されている。6か月に1度定期点検が行われ、ソフトウェアのバージョンアップを行う。
 ジョイ・ワールド・パシフィックの取締役専務営業本部長小田桐英夫氏は「シェフの方々は味の訴求に関してはプロですので、カロリーアンサーを使うことでその調理を科学的に裏付けることができます。食事を楽しみに来られる上顧客に対して、個別にカロリー計算をした料理を提供することで付加価値にもつながります」と語る。

カロリー表示の必要性を強く感じ、導入したアルカディア市ヶ谷 私学会館

 08年12月にカロリーアンサーを導入したアルカディア市ヶ谷私学会館の洋食調理課宴会担当料理長の中野秀樹氏にお話を伺った。同ホテルでは、約6年前からお客さまの情報をできるだけ細かく記録し、次回の利用に活かす試みを続けており、それが功を奏し、宴会集客が伸びている。ホテル内にそういった素地がある中で、中野氏は、近藤勇次総料理長より外食専門誌の広告で「カロリーアンサー」の存在を知らされ、切り抜きを調理準備室の壁に張っておいた。08年にメタボリックという言葉が世間で大きく取り上げられるようになり、カロリー表示の必要性を強く感じた中野氏は上層部の人々に「カロリーアンサーを導入したい」と伝えた。当初、上層部は予算がないと答えていたが、中野氏が専門機関にカロリー計算を依頼した場合の費用や他ホテルとの差別化をアピールできると説得し、導入が決まった。
 「デモンストレーションの際、カロリーメイトでテストをしてもらったのですが、表示を見て正確だと思いました。ダイエットだけでなく、持病のあるお客さまがメニューを見ながら決定できるのもポイントだと思います」と中野氏は語る。

カロリーの表示が料理人の意識を変え、スキルアップに結び付く

 同ホテルでは、レストラン「フォッセ」、日本料理「いちがや」、中国料理「翠」の3店舗のグランドメニューおよびコースメニューのメニューブックに09年1月からカロリー表示を入れることが決まった。各セクションの責任者がカロリーアンサーの担当者になり、各店約30品に加え、ケーキ約30品合計130種のメニューのカロリーを計測した。
 「料理をロボクープにかけてドロドロにしてから計測するのが最初は手間でしたが、慣れるとスムーズにできるようになりました。担当者に聞くと、使っているうちにどのくらいのカロリーかが分かるようになるそうです」と中野氏。料理人の意識も変わった。カロリーを知ることで、例えばバターソテーする際に、過剰な油分を控えたり、衣を付ける際にも、油切りをしっかりするなど調理工程にも変化が表われた。同ホテルでは、計測結果が印字されたシールをノートに貼り、カロリーブックを作成している。
 お客さまからも「持病があるのでカロリー表示は助かる」「カロリーが書いてあるから頼みやすい」「最近食べ過ぎているから低カロリーのものを注文しようかしら」といった声が届いているそうだ。
 今後の課題は、食の楽しみとカロリー表示のバランスをいかに計るかだ。「ホテルは非日常の空間ですから、食を楽しんでいただきたいのですが、実際にショーウインドーに並ぶケーキのカロリー表示を見て『高カロリーだから』という理由で買うのを止めてしまう方もいます。これはダイエット甘味料やノンシュガーを使うといった方法で克服したいと思います」と中野氏。
 「今後は、ダイエットメニューコース、ヘルシーメニューコースを作りたいと考えています。宴会のコースでもヘルシープランを出せたら高齢のお客さまに、もっと喜んでいただけますし、残食も減ると思います」と意欲的に締めくくった。

株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック
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アルカディア市ヶ谷 私学会館

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TEL03-3261-9921
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