2014/1/20

愛ある「叱り」は、人を成長させる

菅沼豊旦シェフが語る人材教育

親であり、兄貴であるような気持ちで後輩に接してみる

私は今、上下関係が大変希薄になっていると思います。日頃、部下が失敗したことに対してどのように対応するかが大切です。今の時代、教育の現場でも体罰が大きな問題になっています。注意する側とされる側に大きな温度差があることはいつの時代も言われ続けて来たことです。それぞれの立場でお客さまに喜んで頂くための技術やノウハウを身に付けるために、毎日努力しているわけですから、少々手荒な指導は必要です。

その人のためを思って叱るんです。厳しく叱ると辞めちゃうから……と、なあなあでやっていたら若い人たちは調子に乗ってしまい、それが当たり前になって、その後輩も同じようなことをするようになります。きちっと叱れるかどうかが先輩たちの魅力なのです。子どもを叱るような気持ちで叱ってみてください。
子どもをきつく叱ってその後、ああ可哀想なことをしたな、と心を痛めるのは親でしょう。叱る人の心の痛みを分かる人は少ないです。たとえその時は分からなくても、後になって「あの時あの人に叱られて良かったな」と思われる料理人でいたいと思います。

時には期待はずれなことも。しかし、人は突然化ける

私は、この人と一緒に仕事したいな、と思う人と縁をいただくようにしてきました。面接の時に「今、この子は18歳だけれど、あと5年経ったら、どんな風に成長してくれるかな?」と期待をするのです。期待感を持てる人は答えてくれる人が多い。しかし、期待が外れることもたくさんあります。そんな時は、自分に見る目がなかったと、自分の修業不足だと思うようにしています。しかし、人間はある日突然化けるんですね。突然エッ!? と思うような変化を遂げる人がいるのです。

店にとって一番必要な人材の背中を、その人のために押せるかどうか

誰にでも、巣立つ時期があります。巣立つ時期に上司としてその人の背中を押せるかかどうか。巣立つ時期というのは、店にとって一番ほしい人材になっていることも確かだからです。この人にどうにか次のステップを踏んでほしい、と将来を考えてあげるのも上司の仕事だと思います。
辞める人は自分から言いにくいものです。ヨーロッパに送り出した人間の大半は、私の方から「そろそろ行ったらどうか」と切り出したものです。今では私より成功している人が多くいます。
職場から逃げ出す人もいました。自分に自信がなくて、情けなさに耐えきれず辞めた人もいます。そうなったら無理に引きとめても良い結果にはなりません。そういう人はどこに行っても同じことを繰り返すからです。
でも、夢は膨らんだりしぼんだりするもの、一度挫折してしぼんだ夢は次に膨らむ時、以前より大きくなるのです。ですから、夢を諦めないでください。

皆、成功者ばかりではありません。叱ってくださる方や、親身になって相談に乗ってくださる方、特に厳しい人が自分にとって大切だと思います。


142人のアンケートが語る調理場の現実(複数回答可)

スタッフが辞める原因とは?
1、辞める人に根性がないから。79人
2、人員が少なく、一人一人の負担が大きい。68人
3、指導の仕方に問題があった。57人
4、その他 49人

スタッフが辞める際、理由を聞きますか?
はい 119人
いいえ 22人

はいと答えた方に聞きます。辞める理由は?
1、他に学びたいことができた。76人
2、忙しい割に給料が安い。71人
3、人間関係に耐えきれない。59人
4、仕事にやりがいが持てない。36人
5、その他 22人


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