2018/5/18

グルテンフリーと国産小麦の未来

SATOKOのオーガニックな「食」のつぶやき Vol.001

初めまして。食育プロデューサーのSATOKOです。福岡で「食」にまつわるさまざまなシーンで活動をさせて頂いています。
「Organic」は英語で有機的な、本質的なという意味です。では、本質的な「食」とはどのようなものでしょうか。美味しいのはもちろんのことですが、食べて元気になる食事。心と体が満たされる食事ではないかと思います。そして使用する食材の産地や生産者のこと、また四季を通じて感じられる日本の風土の素晴らしさまで含めて豊かであること。飽食の時代である今こそ、原点に立ち返り本質的な「食」について考えていきたいと思います。今月から「オーガニック」な視点でポツリポツリとつぶやいて参ります。どうぞお付き合いくださいませ。

「グルテンフリー」。数年前までは耳慣れない言葉でしたが、今はモデルや芸能人の食スタイルで話題に上ったり、お洒落なカフェやレストランのMENUでもよく目にするようになりました。長年、世界ランキング1位の座に君臨してきたテニスプレイヤー、ノバク・ジョコビッチ選手の著書「ジョコビッチの生まれ変わる食事」が出てからでしょうか。日本でも健康や美を意識する男女やアスリートの中で「グルテンフリー」を意識する方が増えてきました。
「グルテン(gluten)」とは、小麦、大麦、ライ麦に含まれるたんぱく質のこと。もっとも知られているのは、小麦グルテンです。パン、パスタ、ラーメン、ピザ、ケーキ、クッキーなど、弾力性と粘着性を生み出すグルテンは、これらの食品を作る上で欠かせない成分です。しかし、このグルテンによるアレルギーをもつ人や、分解・消化する酵素を持たない人が多く存在することが分かってきました。以下はそんな小麦に関する病気です。

 
小麦アレルギー
グルテンアレルギー(グルテン過敏症)
セリアック病(自己免疫疾患。小腸の内表面への損傷によりさまざまな症状が現れる)
グルテン不耐性
 

実は、日本人の約6割がグルテン不耐性であるとも言われています。グルテン不耐性はグルテンを分解・消化する酵素が不足している、もしくは欠如していることで、全身に慢性的な不調が現れます。腹痛、便秘、下痢、頭痛、不眠、めまい、生理痛、生理不順、疲労感、肌荒れなど…。症状はセリアック病にも似ていますが免疫の病気ではなく、アレルギーの有無を調べる抗体検査では発見できません。病気ではないけれど、不調が続くのです。
私自身もプチグルテンフリーな食生活を実践していますが、とても体調が良くなりました。もともとアレルギーなしの健康体。それでも体には良い変化が現れました。とは言っても日本ではまだまだ認知度が低い「グルテンフリー」。欧米ではすでに一般に浸透しており、小麦の消費量が多いイタリアでは病院や公共施設で「グルテンフリー」の食事を提供することが法律で定められています。また、商品表記に関して言えば、海外のオーガニックスーパーでは「グルテンフリー」「ヴィーガン」「ラクトースフリー」の3つは特にしっかりと表記されています。現在日本では、グルテンフリー認証に関する基準、認証機関がないため、たとえ「グルテンフリー」の商品であっても表記がされないことが多いのです。

そもそも小麦が多食されるようになった背景にはいろいろとありますが、今の日本で使用されている小麦はほとんどが輸入小麦です。そこには、遺伝子組み換えの問題やポストハーベスト問題があります。日本では戦後、アメリカから大量に小麦を輸入するようになりました。現在では日本国内の小麦全消費量の85%を輸入に頼り、そのうち6割をアメリカが占めているという現実。日本では収穫後の作物にポストハーベスト農薬を使用することは禁止されています。また、アメリカ国内でも禁止されています。ですが、アメリカから日本へ輸入する際にはポストハーベスト農薬が散布されるのです。ポストハーベスト農薬は有機リン系の農薬ですが、人体に入ると、めまい、頭痛、下痢、便秘、しびれなどの慢性症状を起こし、変異原性、催奇形性も広く認められています。また輸入小麦の問題は、日本の食料自給率を引き下げることにもなっています。日本の農業を支えるためにも、国産小麦を使用したいものです。

ちなみにグルテンは、古代小麦には含有量が少なく、遺伝子操作が大量に行われた現代小麦にもっとも含まれています。小麦は嗜好品という位置づけが好ましいと思うのですが、食べるのなら本当に美味しいものがよいし、体にとって負担の少ないものが〇。そこで最近出会ったのが、岡山県で栽培されている「しらさぎ小麦」です。この小麦はまだ輸入小麦が主流になる前の国産品種で、豊かな風味と独特の食感があり本当に美味しい。しかし絶滅を危惧されている品種なのです。気が付けば「しらさぎ小麦」は奨励品種から外れて、種が市場から手に入らなくなりました。現在は有志農家さんによる自家採取のみ。原種に近い「しらさぎ小麦」は日本の食に、農業に必要なもの。「種子法」廃止についても現在いろいろと議論されていますが、種の保存は必要であると強く感じます。消費者の側から見ても、食の選択肢が減るのは、暮らしの豊かさ、社会としての豊かさを失うことに等しいのではないでしょうか。日本のよいもの、何とか残していきたいと願うばかりです。

SATOKO
SATOKO

『安心安全な食をスタンダードに』をモットーに、食育プロデューサーとしてイベントや講演会を多数企画。SOLAアカデミー主宰。「衣食住と心」を整えることで、心身ともに健康でより豊かな人生を楽しむことをコンセプトにした学びの場「COME TO LIFE」を開講。食と栄養と健康のセミナー講師。ナチュラルフードプロデュースも手掛ける。また未来の子供たちの健康と地球環境を守るための活動も行っている。


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